薄曇りの日は細い雨を思い出す ひたひたと肌を濡らす霧 靴底の脇で跳ねる水 聴覚をくるみ 羊膜のように
色無き唇の開閉が 意図したものを思い出す 音は雨だけを生んだので 残酷なまでに 安らかな影
甘く湿るだけを望んで 雨に打たれた日を思い出す 在ったね、としか記さない 遠くつたない場面は 安らかに影