凛灯舎

Contents

Poetry

失跡

薄曇りの日は細い雨を思い出す
ひたひたと肌を濡らす霧
靴底の脇で跳ねる水
聴覚をくるみ
羊膜のように

色無き唇の開閉が
意図したものを思い出す
音は雨だけを生んだので
残酷なまでに
安らかな影

甘く湿るだけを望んで
雨に打たれた日を思い出す
在ったね、としか記さない
遠くつたない場面は
安らかに影

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