凛灯舎

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Novel

Serial

砂の花
 車間距離を詰めて走る車が嫌いだ。急いているのかいないのか、追い越しもしないのに、ドライバーの顔が確認できるほどの近さで付いて来る車が嫌いだ。(2006年5月掲載開始)

Short

五里の路
 人並みに生きて来たと、友永数右衛門はそう思う。
 特別に悪いこともせず、また誉められることもなく、三十四年を生きて来た。まだ子はないとはいえ仲睦まじい妻もいる。(2006年01月/12枚)
けむり
 眼球に油を巻いているようだと言うと、それが常態だと彼は嘯いた。ヘビースモーカーで、三十分も一緒にいると愛飲の中国煙草の匂いがこちらの皮膚にまで染み込んでしまう。(2003年11月/4枚)
 毎日骨を拾っている。
 獣のそれでは無い、歴とした人間の骨である。(2002年12月/13枚)
鬼灯
 唇が開いた時、私はもう自分の中に衝動のあることを知っていた。
 少女はその饒舌で土地に伝わる祭の夜のことを話しかけたが、最後まで云わせずに塞いでしまった。(2001年09月/11枚)
春泥
 いつもの通りの彼の手捌きは見事と云う他ない。良く使い込まれたフライパンは深い黒光りを見せ、その中で跳ねる食材をいかにも旨そうに見せる。(2001年04月/7枚)
煙草に纏わるひとつの思い出
 彼の手から、外国煙草の匂いがした。
 それだけのことだ。(2001年02月/5枚)
雪路にて
「そりゃあ君」
 彼は言った。
「そりゃあ君、万物の根源たる母なる海でしょう」(2000年11月/12枚)

Long

闇濘幻想 ...       (完結)
 盧溝橋事件の年でありましたか、私は詩人の中原中也が逝った年であったと記憶しております。
 後に文献などを見れば、かの戦艦大和の着工された年であると云いますから、世の中は軍需景気に沸きあがっていたとも思われます。(2001年07月/47枚)

※()内の枚数は、四百字詰原稿用紙(20×20)でのおおよその換算です。

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