お願いだ、夕暮れ
そこに居るのはよしてくれ
反故にしようとあったのを
広げ見る真似はやめてくれ
その幾色かの固まりは
硝子を彫った花弁の
磨った感じのようであり
その複雑な明暗は
生きとし生けるものの持つ
螺旋の如くに絡み合う
西の彼方で飽き足らず
東の対までお前に染めて
なにかに心細いふりで
人の心を誘い出し
夕暮れ、もうよしてくれ
その形をしてそこに居るのは
ようやく眠らしかけたのに
感傷で呼ばり起こすのは
線虫は細工の溝に嵌り
もはや茜の手の内で
失くしていたのか放るのか
それも分からず廻っている
生ある、或いは
生あったらしい現実を