みずに足を浸すのはこわくない
ひとまとめに わたしは
媒介をつたって
すぐに川底の石英となる
ほろほろと 上手に
わたしはほどけてゆく
ほつれた糸 さなくば
良く焼けたほぐし身のような
ふがいない仕草で
かかとまでみずに浸かると
そこからわたしは始まる
しだらなく伸びて
みずの隙間へ丁寧にいる
打ち上がるのを待つ流れ木に
湧水のうたを聴くすなつぶに
とおい日の
かえりを待つすべてに
ゆらゆらと 靄は
やがてひとのかたちを造る
頭のさきから 手のさきから
しぶきを上げわたしは戻る
魚たちはもうわたしをみない
――みず に
足を浸すのはこわくない
ほどけたわたしの端切れが
まだみなそこに住んでいる
あさい水面にたゆとうて
いつまでもそこにいる