凛灯舎

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Poetry

透かし窓

玩具の兵隊は静粛に爪を砥ぎ
向かいの娘は窓から花を散らしてる
あたしは地獄に行き会った
澄んだ目をして言った哀れな娘

見覚えのあるステップを踏むのだ
宿六のような好き勝手な韻で
訊かれたら楽しんでいると応えよう
あんたの生涯よりは余程と

きつい煙草はさっきほうった
もう少しで文無しと呼ばれる
けれど娘 お前の花を悼むよう
少しばかりの酒を残しておこう

ロマンチズムは思いの外沢山あった
腹一杯に食い飽きるほどあった
髪の全部に染み付く前に捨てよう
既にそれを紡ぐためにはない

玩具の兵隊は静粛に爪を砥ぎ
向かいの娘は窓から花を散らしてる
良く見知ったそれを拾うと
世間をにおわせ振り撒き落ちた

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