冬の時雨れてくる頃に出会えば良かった
街並みが人工の香りに慣れた頃
女たちが疲れた顔でこの冬の愚痴を言う頃
白い菓子の路に子供らが飽きた頃
私たちは春に出会った
夏は華やぎ
秋は憂い
冬は静かだった
空は二度と同じ雪を降らせてはくれない
あれほどの結晶が生まれるというのに
冬は静かだった
絶え間なく降り消える透明を
少しずつ拾うのは途方もないことに思えた
私たちは冬に別れた
冬の時雨れてくる頃ならば
哀しい曇天と陽射しの中途を
春に追われ僅かに降る雪の光を
私は憶えていられたろうか
冬の時雨れてくる頃に出会えば良かった
皆がもう一度春を見付け出す頃
これからのひととせに思い馳せる頃
この冬の名残を惜しむ頃