凛灯舎

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Poetry

漂泊列車の心

スタンプを鳴らして車掌が行く
朝一番の急行列車の真ん中を行く
そら御覧じろと用意をするが
車掌は中々やってはこない

意識はいつも漂泊している
ゼイタクは言わず心の中で漂泊している
寸断される電車の拍動のような
思想と天気が共にある

北の歌唄いは南の奏者に焦がれ
西の語り部は東の踊り屋に恋をする
歌唄いの言うには 詩人は嘘吐きのリアリスト
奏者の言うには 詩人は自分を病んでいる
語り部の言うには 詩人は世界を飼い殺し
踊り屋の言うには 詩人は獣の肝を持つ

西や東や南や北や
夢だけを連れた詩人のようなものが行く
やあやあ車掌はまだ来ない
惰弱の切符は切れないか

斯くしてそれは漂泊している
いつまでも枕木の旋律で漂泊している

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