凛灯舎

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Poetry

朝月

夜を知らずに昇る光は希望に似ている
純墨の暗闇や心地良い無秩序や
生ぬるい泥濘のような時を

月を枯らして映える光は希望に似ている
繰り返し繰り返す今日を運び
かすかな名残など素知らぬ顔で

宵に生まれる星を見ず
夜を招く光は希望に似ている
切望に冴える絶望を忘れた
あの忌々しい希望に似ている!

薄く引き摺る夜の尾など
意に介さずに陽は寄せる
身勝手な熱で
つぶれるほどの眩さで
世界は輪郭を取り戻し
先を歩めと呼吸を強いる

昇る散乱をかき抱き
朝の月を仰ぐ姿は
希望を知る絶望に似ている
空色にまで留まる月は
絶望に徹せぬ私に似ている

絶えぬ光に息紡ぐ月は愚かにも似て
なお終えぬ希求を招こう
一日に朝を昇らそう

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