空の狭い路地裏の
いいかげんな水路へ
ぐねりと捕まった
護謨風船よ
日の光に潰され
飲み屋と飲み屋の隙間に
張りもなく横たわった
薄桃の腹よ
ヘドロ臭いぬめりに
乾いた朝が反射する
街は今日を翻し
当たり前の顔でいるが
おまえを見る者はあったか
悠然と風を漕ぐ様を
弾むような柔らかさを
思ってくれる者はあったか
セメントのざらつきに
まだ保たれた結び目に
おまえから見えるものに
立ち止まる者はあったか
護謨風船よ
誰がおまえを作り上げ
誰がおまえを膨らまし
誰がおまえを抱いたのだ
憶えているか
地にへばるように
咲かされた花よ
誰がおまえを捨てたのだ
誰が
おまえを泣いてくれるのだ