わたくしのペンの横に 一匹の羽虫がいる 溶けた蝋に飛び込み もがく間もなく沈んだ 幾日か前のことだ
燃え尽きたアルミ容器で 羽虫は足を曲げている 蝋の滓にへばりつき 黒い目の他は薄白く被われ 柔らかなフォルムのまま 立体を保っている
それは朽ちることもなく まるで永久の素振りでおり 困惑のような艶を わたくしの目に反射する
闇の濃い夜だった ひとしきり弧を描き 明滅する炎に吸われ 一匹の羽虫が死んだ 幾日か前のことだ