凛灯舎

Contents

Poetry

失せ物

ひと月に片方ずつ
失くしている

様々の水玉
無難な黒
編み込みの縞
灰地の格子

膝下の紺
くるぶしまでの赤
ビリジャンの毛糸
雪色のガーター

ひと月に片方ずつ
亡くしてゆく
いつかの予定
それからの思い
半分だけ見失い
引き出しを
一面
ちぐはぐに埋め

揃わない靴下を
私はどうにも捨てられず
補えないひとつを
私はどうにも見限れず
溢れかけると
畳んでは詰め
時折
つくろいもしながら

片方ずつ失くしても
あの日の予定
あれからの思い
また組み合わさることもあるだろう
とりどりの切れ端
私はじっと抱えてゆく

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