凛灯舎

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Poetry

さくら

ここでは光は面紗ではなく
生温かい闇を
しずかに しずかに
塵のような粒子で守っている

花塊を照らす電球の
あのうちどれが
本物の幻燈なのか
思い出そうとするのだが

例えば滑り台の天辺
曇天の夜を独り占めにする
うつくしい触覚が
失せる日が
失せたと知らさる日々が
これほど早く来ようとは

光が闇を生かすのならば
忌々しいほど白い粒子は
花弁を経ては降り積もり
幾日 命を与うだろう
確かむるやと憐れみに
春は今年もこの身を作る

あざとくも鞦韆に揺れ
地に反し
天を真逆に置き
するりと息を吸い込んで
視界に朧 うすべに浮かせ
現と呼ばれる朝を待とうか

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